もうつかれた

僕は、転校していじめられた。いじめられたというより、友達の輪から省かれた。なぜなら、僕が怒りんぼだったから。怒りんぼがいたら、一緒にいても楽しくない。全部僕のせいだ。相手の気持ちになって考えた。もし僕みたいな怒りんぼがグループに入ってこようとしたら、そりゃ排斥するに限る。だってそいつといたってメリットなんてないし、輪が乱れるだけ。それなら簡単だ。

 

      そんな異物なんて排除してしまえばいい

 

 僕が、ただ怒ってばかりで傲慢な生物だったから、皆に嫌われたんだ。がん細胞みたいな異物は、排除するのみ。共存は、ありえない。

 そうか。僕は、異物だったんだ。忌むべき存在で、そのままのぼくじゃ絶対にダメだ。そんな時の、快刀乱麻のおまじないを教えちゃいます!!!!

 

 

 

 

「我慢しろ」

 

 

 

 

それが、いじめを親に相談したときに受けた唯一のありがたいアドバイス。怒りを、我慢する。我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ

我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ

我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ

我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ

我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ

我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ

我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ

我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ

 

そうしなければ、僕は生きていけない。みんなに、嫌われちゃうから。僕は、ゴミみたいな、存在だから。

 

 それなのになぜ、あとから転校してきたA君は、嫌われてないの。なんで、みんなに受け入れられているの。おかしい。そうか。あの子は、野球ができて、足が速くて、穏やかな性格で、怒ったりしないからだ。僕には、特出した才能なんて、一つもないから、みんなになじめないし、受け入れられないし、注目もされないんだ。とにかく、僕の怒りんぼの姿は、絶対に今後誰にも見せてはいけない。とにかく、自分を抑えて、我慢しなければ。 

 隣に、別の新しい転校生がやってきた。その子は、なんと一時期丸々した顔立ちを一部の子から馬鹿にされていた。放っておけなかった。家が隣だってこともあったし、僕と同じような思いは絶対にさせてはいけないという正義感もあったと思う。奴らが隣の子を馬鹿にする度に、「馬鹿にすんな!!!!!!!!!!!!!!!」って大声で言い返して、睨みつけてやった。それしかできなかったけど、僕なりに必死で守ろうとした。

 

 けれど、隣の子は、僕がいじめられたとき、何にもしてくれなかった。

 

 その子は野球大好きで、彼の母親も

「ひぐまくんも野球やろうよ」

なんてしょっちゅう勧誘してきた。そんなに言うんだったら、やってみようかな。隣の子も当時二軍(初心者含む)で一緒に野球楽しめるし、もっと仲良くなれるかもしれないし、アニメのメジャー好きだったし、うちのお父さんとキャッチボールできるようになるかもしれないし。

 そして、いざ入部したけど、それと同時に隣の子が一軍に昇格してしまった。僕は野球のルールのルも知らない初心者だったから、当然、二軍の底辺からスタート。所属する階級が違うわけだから、勿論一軍には一軍の、二軍には二軍の練習があるし、大会も当然ベンチに入ることすらできなかったから話すこともなかったし、彼と交わることなんて一回もなかった。

 そんなこんなで隣の子と一緒にできないし、野球も好きになれなかったし、サッカーもやってたし、練習もコーチもきつかったから、結局一年で辞めてしまった。ちょうど一軍の人たちが強くて小学校の大会で優勝した頃だったかな。そのおこぼれで二軍の人も金メダルをもらっていて、僕も同じやつをもらった。そんな時に辞めたもんだから、

「あいつメダル持ち逃げしやがった!!」

って悪態つかれて、野球部の人(主に二軍)から結構反感を買ってしまったらしい。クラス内にも一軍の部員が結構いて、野球部が固まったときには少し意地悪されたし。二軍の人みたいにすれ違いざまに「辞めやがって!!!!!」とかは言われなかったけどね。二軍内で野球部を辞めること自体禁忌みたいな風潮があった気がする。こんな辛い環境からお前だけ逃げやがって!!!みたいな感じ。二軍の人たちは野球よりもゲームのほうが好きですみたいな人が多かったし。

 結構精神的に辛かったけど、

「いじめは転校当初に経験してるから大丈夫」

って自分に言い聞かせて、毎日頑張って登校して一度も休まなかった。

けど、隣の子は、僕に何にもしてくれなかった。辞める時も話をした記憶もないし、辞めた後も「大丈夫?」の一言もなかった。というか、クラス内の嫌がらせの際に、隣の子も後ろで黙ってみてたしねw

隣の子がいじめられた時は僕なりに守ってあげたけど、僕がいじめられた時には何にもしてくれなかった。本当に、何も。というか始めから誘っておいて何にもしてくれなかったしね。多分僕がいじめられていることすら知らなかったと思う。

 

こんな感じの学校生活で、ゆとりもくそもありゃしない。家では父が仕事で疲れて子供や妻に注意とは程遠い怖い声や態度で八つ当たりしてたし、母は精神病んでて家事以外はずっと寝てたし。というか毎日大声で喧嘩してたしね。姉も自分に精いっぱいで俺に一切かまわなかったし。友達もいなかったし。サッカーも好きじゃなったし下手糞だったし。頭も普通だったし。ずっと小学校から肩こってて頭痛くて相談できる人も安心できる場所もなくて、だれも、僕の辛さに気付いてくれなくて、こんな状況で育ったら、そりゃ精神疾患にもなるでしょ。毎日生きるのに必死で自分の好きなこととか才能を伸ばすとかできるわけないでしょ。そうじゃないと、そう考えないと、今の僕は、崩れてしまう。死にたい。